私は現在、私立中学校で教員として働いているのですが、日々、生徒たちの成長を間近で見守りながら、「私立に通わせるという選択」がどのように子どもたちの人生に影響を与えているかを、肌で感じています。
本記事では、現場の教員としての視点から、私立中学校受験の「メリット」と「デメリット」について、できるだけリアルに、そして正直にお伝えしていきたいと思います。

親として、子どもの進路に悩むのは当然のこと。塾や資料からだけでは見えてこない「生徒たちのリアルな様子」をお伝えすることで、少しでも進路選択の助けになれば幸いです。
私立中学校受験のメリット
① 大学附属校なら、偏差値以上の進路も夢ではない
大学附属の私立中学校では、内部推薦などによって外部からの受験では到底届かないような難関大学に進学できる道が拓かれています。特に近年は推薦枠が増加傾向にあり、「入り口偏差値以上の出口成果」が得られる学校も少なくありません。
正直、「MARCH」や「関関同立」の附属校の生徒が、高3で一般受験をした場合に肌感覚ではおおよそ6割以上は間違いなく不合格になるような学力であるという感じです。
② 中高一貫なら、早期の受験対策が可能に
私立の中高一貫校では、高校3年生で学ぶ内容を高校1年生で終えるようなスピード感あるカリキュラムを採用している学校もあります。これにより、高2からは演習中心の授業に切り替えたり、海外大学対策に充てたりと、受験に向けた自由度の高い学習が可能になります。
③ 中学校時代の活動が公立以上に多彩
特に中学の段階では、私立ならではの個性的で意義深い活動が数多く行われている点も魅力です。海外研修、探究型学習、企業との連携プロジェクトなど、義務教育である公立中ではなかなか経験できないような取り組みが展開されています。
④ 「脱・受験」が可能だからこそ得られる経験がある
高校受験がないぶん、中学3年生の1年間を丸ごと「体験活動」に使えるのも私立ならでは。最後まで部活動をやり切る生徒も多く、学校行事やリーダーシップ経験に注力できる環境が整っています。
私立中学校受験のデメリット
① 地元のつながりが薄くなることも
私立に通うと、地元の小学校の友人と疎遠になることがあります。特に成人式では、地元で友達が少なく寂しさを感じる生徒も。私立中ならではの人間関係は築ける一方、地域コミュニティとの接点は希薄になりがちです。
② 受験がないからこそ「だらける」危険も
高校や大学受験が内部進学で済むと、「頑張らなくても進学できる」と思ってしまい、学習のモチベーションが低下する生徒も実際にいます。もちろん、学校側も指導しますが、自律心のある子ほどメリットを活かしやすいのが現実です。
③ やはり費用はかかる。その価値をどう見るか?
「高校までは私立でいいけど、大学は国立でね」という声を子どもから聞くことがあります。ですが、実際は大学受験にかかるコストも高く、私立の費用を抑えたからといって、国立進学が保証されるわけではありません。
私立中に通わせるべきご家庭は、「進学のため」ではなく「豊かな経験のためにお金を投資する」というスタンスの方が向いています。いわば、学びの“場”に価値を見出す保護者の選択肢だといえるでしょう。
現場からのまとめ
私立中学校は、単なる「学力偏差値」では測れない多様な学びと経験を得られる環境です。しかしその一方で、子どもに合っていないと本来の力を発揮できず、逆にモチベーションを失ってしまうことも。
だからこそ、私立受験を検討される場合には、「学力」だけでなく「性格」や「価値観」も含めて総合的に見て学校を選ぶことが重要です。
現役私学教員として、私立中学校は確かに魅力的な選択肢であると感じています。しかし、だからこそ「入ってからどう過ごすか」まで考えて選んでほしい、それが率直な想いです。
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