なぜ人は笑うのか? 〜笑いの謎とその役割〜

私たちは日常生活の中で何気なく笑っています。

しかし、「なぜ人は笑うのか?」と問われると、意外と明確に答えるのは難しいものです。

「笑い」は結局は「反応」なはずだと思っていました。

例えば、「痛い」という反応、これがないと知らずにたくさんの血を流すことになり最悪死ぬかもしれません。

「怒る」という反応、これがあることで自分へのストレスをはじいたり防いだりすることができます。

でも、不思議なのは「笑う」という反応によってなにが生まれるのか、ということです。

もちろん、ストレス発散にはなりますが、「ストレスがかかる」に対する直接的な反応ではないですよね。

なぜなら、ストレスを与えられて「笑う」人はいないからです。

つまり、「笑う」ことは、ストレス発散の効果はあってもそれを目的とした反応ではないはずなのです。

人間の感情には必ず意図があります。さらにいえば、そこには生物の最大の本能である「生きる」ための反応であるはず。では、なぜ人は「笑う」という感情を持つようになったのか

笑いには進化的な背景があるのか、あるいは単なる文化的な産物なのか

この記事では、笑いのメカニズムや役割について探っていきます。

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笑いの生物学的な役割

笑いは人間だけでなく、チンパンジーやゴリラといった霊長類にも見られます

例えば、チンパンジー同士はじゃれ合う際に笑いに似た声を出すことが観察されています。

これは、社会的な結束を強め、対立を緩和するためのコミュニケーション手段の一つと考えられています。

また、笑いの起源は「遊び」にあるとする説もあり、動物がリラックスした状態で仲間と関わる際に笑いのような行動を示すことが報告されています。

進化の観点から見ると、笑いは「社会的な結束を強める機能」を持つと考えられています。

例えば、狩猟採集時代の人類は集団で生活しており、協力が不可欠でした。

その中で笑いは、仲間同士の絆を深め、敵意を和らげる役割を果たしたと考えられます。

また、笑いは普遍的なものではありますが、文化によって笑いの種類や場面は異なります

例えば、日本の「落語」は言葉遊びや長いストーリー構成が特徴的ですが、西洋の「スタンドアップコメディ」は皮肉や政治風刺が主流です。また、社会的なタブーも笑いに影響を与えます。ある文化では許容されるジョークが、別の文化では不適切とされることもあります。

このように、笑いはその国や地域の価値観や歴史と密接に結びついていて、なにを笑うかによってもその社会的な仲間意識が反映されるとも言えます。

進化の過程で、「笑い」は社会的な結束、をもたらした。

笑いの心理学的なメカニズム

心理学の視点からは、笑いは「予期しない出来事」や「矛盾した状況」によって引き起こされることが多いとされています。たとえば、ジョークやコメディでは、意外な結末やダブルミーニングが笑いを生むことがあります。

一般的には、この「予期しない出来事」が笑いを生む要因として重要です。

例えば、言葉遊びやナンセンスな状況、意外性のあるオチが組み込まれたストーリーは、私たちの期待と現実のズレを引き起こし、脳が「ギャップ」を認識することで笑いが生じます。このギャップ理論は、長年にわたって笑いの研究で取り上げられてきました。

つまり、矛盾の認識は、認知的不協和の解消の一環として笑いをもたらすと考えられています。

では、認知的不協和の解消のために笑うのか。

認知的不協和とは、私たちが持つ価値観や期待と現実の間に矛盾が生じたときに感じる心理的な不快感のことを指します。この不快感を解消するために、私たちはしばしば笑いという反応を示します

例えば、権威ある人物が場違いな行動をとったり、予想外の発言をした場合、私たちの脳は一時的に混乱します。しかし、この矛盾をポジティブに解釈しようとする脳の働きが笑いを引き起こし、結果としてストレスや緊張を和らげる効果をもたらしますこれは一種の防衛反応といえるでしょう

また、笑いには「優越感理論」も関係しています。これは、他者の失敗や間違いを見たときに、自分の方が優位に立っていると感じて笑うというものです。これは種の存続という観点では当然の心理的な行為ですね。

脳の認識の混乱を埋めるための自己反応が「笑い」である。また、自己優越感のための行為としても現れる。

まとめ

様々に研究を確認しましたが、まだまだ「笑う」ことについては未知な部分も多いようです。

少なくとも、笑うは「脳の反応」であることは何となく理解できました

つまり、「痛い」というような身体の反応ではなく、「心」の反応なのだと。

昔、「心理学の観点では人間が一番仲良くなれる手段は何だと思うか」と聞かれたことがあります。

答えは「共通の敵を作ること」、つまり、悪口を一緒に言うのが一番仲良くなれるということです。

とても共感したのですが、なかなかこれを学級経営に生かすのは難しいなとおもっていました。

ただ、先ほど紹介したように「笑い」は社会的な結束を生むために生まれたのであれば、

むしろ、「悪口を言う」のではなく、「一緒に笑う」という観点でも上手く学級経営に生かせそうだなと感じた次第です。

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