以前、国際バカロレア認定校で働いていました。
そのなかで感じたサードカルチャーキッズについて、私自身の大学院での研究内容も含めて紹介したいと思います。
みなさんは帰国子女に「英語ができていいな」と言ったことはありませんか?
その言葉が相手を傷つけているかもしれません。
TCK(サードカルチャーキッズ)とは?
皆さんは「TCK(サードカルチャーキッズ)」という言葉をご存知でしょうか?
TCKとは、第3の文化で育った子を指します。
- 第1の文化:両親の文化
- 第2の文化:住んでいる地域の文化
- 第3の文化:第1でも第2でもない、新しい文化
具体的には「発達段階の多くの期間を、両親の文化圏とは異なる場所で過ごした子ども」のことです。
教育現場において、この概念を知らないのは大きな問題です。TCKの特徴を理解しないと、子どもたちが直面する悩みに適切に対応できないからです。
TCKが注目される背景
TCKという言葉は1990年代後半から広まりました。その背景にはグローバル化の進展があります。国際的な企業の増加や海外赴任の増加により、海外で育つ子どもたちが増えました。
彼らは「グローバル人材」としての期待を背負う一方で、アイデンティティの確立や言語習得に関する悩みを抱えることが多くなっています。
TCKの抱える主な悩み
TCKが抱える悩みは以下のようなものが研究では明らかになっています。
- 言語の問題(中途半端なバイリンガル)
- 日本語と英語のどちらも流暢でないことにコンプレックスを抱えることがある。
- アイデンティティの混乱
- 「自分はどこの国の人なのか?」と悩む。
- 文化の違いを背景に、自己認識が曖昧になることがある。
- 周囲からの理解の欠如
- 日本に帰国後、海外経験がない人に自分の感覚を理解してもらえない。
- 「特別な存在」として扱われることへの戸惑い。
- 頻繁な別れへの適応
- 転勤が多いため「バイバイ慣れ」している。
- 友人関係を築くのに消極的になりやすい。
- 「根無し草」感覚
- どこにも完全に馴染めないと感じることがある。
- 一つの文化圏で育った同世代を羨む気持ち。
さらに、比較的以下の状況であることが多いことも明らかになっています。
- 外見が異なる場合が多い(アジア圏では目立ちにくい)
- 移民ではなく、一時的な海外滞在者(いずれ帰国する前提)
- 比較的裕福な家庭が多い(企業の駐在員など)
- 母国の代表意識が強い(自国文化を守ろうとする傾向)
TCKへのインタビューから見えたリアルな声
TCKのリアルな体験を知るため、大学院時代にインタビューを行ったことがあります。
ある帰国子女の生徒は、こんな悩みを語ってくれました。
「帰国後、先生に『英語ができていいね』と言われました。でも、自分は英語を簡単に習得したわけではなく、大変な思いをして努力して身につけたのに、まるで『勝手にできるようになっていいね』と言われるのが本当に嫌でした。」
このような言葉からも分かるように、帰国子女だからといって英語が自然に身についたわけではなく、そこには大変な努力があったことを理解する必要があります。
教員がTCKを理解することの重要性
教育者として、TCKの存在を知らないのは致命的です。
なぜなら、TCKは一般的な日本の生徒とは異なる課題を抱えており、彼らに寄り添うためには理解が不可欠だからです。
例えば、
- 「バイリンガルだから英語は完璧」という誤解をしない。
- 「帰国子女だから適応力がある」と思い込まない。
- 「アイデンティティの悩みは特別なことではない」と知る。
これらを踏まえた指導が求められます。
TCKの親ができること
実はTCKについては親への支援も大切です。
むしろ、親にどのようなアドバイスができるかが大きな鍵を握ります。
TCKを育てる親として、以下の点を意識することが重要です。
- 家族の習慣を作る(家族内の文化を大切にする)
- 地元のコミュニティに溶け込む(現地の友人を作る)
- 親戚との絆を保つ(家族とのつながりを意識する)
- 長く続く友人関係を築く(転勤後も連絡を取り合う)
- 「帰る場所」を作る(毎回同じ場所に帰省する)
- 海外滞在をポジティブに捉える(経由地の思い出を大切に)
- 周囲と積極的に関わる(新しい環境への適応力を養う)
- アイデンティティを尊重する(無理にどちらかの文化に適応させない)
まとめ
TCK(サードカルチャーキッズ)は、グローバル化に伴い増加しており、教育現場でも重要なテーマとなっています。
教員として、少なくとも
- TCKの背景や特徴を理解する
- 彼らの悩みに寄り添う
- 画一的な価値観を押し付けない
これらを意識することで、TCKの子どもたちがより健やかに成長できる環境を整えることができます。
現役教員として、TCKへの理解を深め、より良い教育環境を整えていきましょう!
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