教員採用試験において「志望理由書」は、人物評価の中心ともいえる重要な書類です。どんなに優れた教育観を持っていても、その魅力が採用側に伝わらなければ意味がありません。
しかし、この志望理由書が自分本位になっていて、採用者にとって「採用したい!」というものになっていないことがよくあります。
本記事では、教員採用試験の志望理由書の書き方に関して、特に教員採用試験に特化したうえでに向けて、合格に近づくための5つの重要ポイントと避けるべきNG例を具体的に解説します。
1. 志望理由書は「教員になりたい理由」ではなく「その自治体の志望理由」
まず押さえておきたいのが、「教職を目指したきっかけ」よりも、「自分がその自治体で教員として何ができるか」を明確に伝えることが重要だという点です。
NG例(ありがち)
私が教職を志したのは、高校時代の挫折と再起の経験にあります。〜
これは感動的なストーリーではありますが、「なぜ教師になりたいのか」は動機であり、「この自治体を志望した」理由にはなりません。
OK例(効果的な始め方)
茨城県の教育目標である「主体的に学ぶ子ども」を育成するために、私は以下の2点で貢献が可能です。第一に〜、第二に〜。
→ 具体的な教育ビジョンを冒頭で打ち出すことで、採用側は「この人に任せたらどんな教育が実現できるか」が明確にイメージできます。
2. 「実績」ベースで語るのが経験者の強み
新卒と差別化する最大のポイントは、過去の教育経験をもとに語れることです。理想や希望だけで書くと、新卒と同じ土俵で比較され、年齢的に不利になります。
NG例
生徒が主体的に学ぶ力を育てたいと考えています。
→ 理想論。具体性がない。
OK例
担任業務に加え、入試広報室の主任として、中学校訪問や保護者対応を行う中で、3000名以上の受験者を迎える対応力を培いました。この「連携力・調整力」を活かし、特別な配慮が必要な生徒にも安心して学べる学級づくりを実現してきました。
→ 事実と実績で語ることで説得力が大幅に増します。
3. 「教育観」は抽象的ではなく、具体的な授業・活動で
「大切にしたい教育観」を書く場合も、単なる理想ではなく、どんな授業・活動でそれを形にしてきたのかまで落とし込みましょう。
NG例
私は主体的に学ぶ姿勢と協働する力を大切にしたいです。
→ 誰でも書けてしまう内容です。大事なのは、「主体的に学ぶ姿勢と協働する力」を育成するためにあなたは何ができるのかまで書くことです。
OK例
中学での地理の授業では、1人1台端末を使い、GISを活用した地域分析を行いました。生徒が自ら問いを立て、情報を探し、プレゼンテーションするプロセスを重視し、主体性と協働性の両立を実現しました。
→ 方法論だけでなく、それを通して育てたい力と実際の成果を記載することがポイントです。
4. 公立ならではの現実にも言及し、柔軟さを示す
私立や附属校などで先進的な教育実践をしてきた人は、「公立でもこれができる」と思われがちですが、教材や時間の制約を踏まえて書くことが信頼につながります。
NG例
STEAM教育を活用し、3Dプリンターやプログラミングを取り入れた授業を行ってきました。
→ 公立現場では非現実的に思われることも。(ただし、私立では良いです!)
OK例
公立では使用できる機材に限りがありますが、例えば3Dプリンターで地形を再現した経験から、紙粘土や立体模型でも「地形の特徴とくらしの関係性」を体感できる授業にアレンジしてきました。
→ 限られた環境で工夫する姿勢が評価されます。
5. 地方自治体(都道府県・市区町村)の教育方針に即して書く
最後に最重要ポイントですが、「どこでも通用する内容」は逆に不合格になります。志望自治体に合わせて書くことは最低条件です。
OK例
茨城県の「郷土を愛し、社会の変化に柔軟に対応する人材育成」という目標に対し、地域の特色を活かしたフィールドワーク型社会科授業を実施してきた経験を活かします。
→ 教育目標に即しているかどうかをチェックしましょう。
まとめ|教員採用試験・志望理由書のチェックリスト
✅ 教職を志した理由ではなく、「自分が教員として何を提供できるか」を書く
✅ 理想ではなく、実績と具体的エピソードで語る
✅ 教育観は、具体的な授業・活動で表現する
✅ 公立現場の制約を踏まえ、工夫と柔軟さを示す
✅ 志望する自治体の教育方針に沿った表現をする
さいごに
志望理由書は、**「私がこの学校、この地域でどんな価値を提供できるのか」**を伝えるための自己PR文です。ポイントを押さえて、あなたならではの経験と教育観を魅力的に伝えましょう。

これまで教員採用試験の試験官を務めた経験があり、200件以上の指導実績をもとに、確かなノウハウで受験生をサポートしています。
教職志望の学生や現職の先生方に向けて、「伝わる言葉」「深まる自己理解」「実践につながるアウトプット」を重視した指導を行っています。
模擬授業・場面指導・論文・面接まで、どの段階でも対応可能です。
過去に担当した方々からは、
「言葉にできなかった思いを引き出してもらえた」
「なんとなくの不安が、自信に変わった」
といった声をいただいています。
また、文章の添削指導も可能です。志望動機や論文、ESなどについての添削をご希望の方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
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