中高校生のスマホ依存症を直すための親ができる心理学アプローチ

現代の中学生高校生にとって、スマートフォンは生活の中心になりつつあります。

学校での連絡手段としてだけでなく、友人との交流やエンターテインメントのツールとしても重宝されています。

しかし、過度にスマホを使用することで依存症に陥り、学業や社会生活に支障をきたすことがあります。

正直そんなことはわかっている、だけども子供が言うことをきかない!!

そんな親も多いのではないでしょうか?

親の制限だけでは改善が難しい場合も多いため、依存症を克服するためには現実的な心理学的なアプローチを考えてみました。

この記事では、心理学的な観点から中高生のスマホ依存症を直すための現実的な5つの方法を紹介します。

あくまで「現実的に!」なので理想論ではなく現実的な対応をお伝えします!

そもそも、スマホ依存症については様々に定義があります

ただ、あくまで教員目線でいえば、やるべきことがあるにも関わらずスマホを優先してしまうこと、だと思っています。例えば、宿題やテスト勉強というわかりやすいものから、日々の生活課題である「寝ること」「食べること」、学校生活での「学校に通うこと」や「部活動」、等々、子供たちにとって「やるべきこと」があるにも関わらず、「スマホを優先」し、それらの課題が手につかない状態がスマホ依存症です。

言い換えれば、やるべきことをしっかりとやっていて、それ以外の時間を全てスマホに費やす子は全く依存症ではありません

そして、親が全てを「スマホのせい」にしていることも少なくありません。

例えば、宿題をやりました。子供は終わったと認識しているけれど、親からするともっと勉強してほしいし読書などもしてほしい。そんな気持ちのなかで子供はスマホばかり見ている。そこで親が「スマホをやめさせたい!」というのはそれはアプローチの仕方がまったく違います。最近、子供に「テレビばっかり観ないで!」と指導した親はいますか?おそらくいないはず。でもかつては、「テレビ!」「ゲーム!」だったはず。結局、子供が勉強したくない、他の楽しいことをしたい、というのは通例で、それが今「スマホ」に全ての責任を押し付けるのは、そこは冷静になるべきだと思います。こういう場合にはいくらスマホが無くてもほかのなにか(テレビやゲーム)に移行するだけです。

こうしたことも踏まえて、あくまでスマホ依存症の子に向けたアプローチを考えていきたいと思います。


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スマホ使用の根本的な原因を探る — 「自己肯定感」と「承認欲求」

中学生・高校生がスマホに依存する理由の一つに、「自己肯定感の低さ」「承認欲求の満たし方」があります。

心理学的には、人は他者からの承認を得ることで自尊心を保つ傾向があり(Deci & Ryan, 2000)、特に思春期の子どもは社会的な評価に強く影響されます

SNSやゲームは、即時的なフィードバック(「いいね!」やコメント)を通じて、この承認欲求を満たしてくれるため、依存が進行しやすくなります

なので、子どもがスマホを使うことで何を得ているのか、どのような感情的なニーズが満たされているのかを理解し、実生活でそのニーズを満たす方法を一緒に考えていくことが、依存症の克服に繋がります。

その点を踏まえて具体的な方策を以下に考えていきましょう


認知行動療法(CBT)を取り入れる — 思考と行動のパターンを変える

スマホ依存症の治療において、認知行動療法(CBT)は非常に効果的な方法とされています。

CBTは、特定の行動や思考のパターンを変えることを目指す治療法で、依存症の治療にも多く利用されています。

特に、子どもが「スマホを使わないと不安になる」「スマホを使わないと他人と疎遠になる」といった思考の癖を持っている場合、このような誤った認識を修正することが重要です(Beck, 2011)。

親ができることとしては、子どもと一緒に「スマホがない生活」に対するポジティブな認識を育てることです。

つまり、スマホを使いたいとは思わない時間を作り出す、ことが大事です。

ここでポイントは「作り出す」ことで、基本的に子供は「スマホを使いたい!」という思考になっているため、ある程度事故的に演出してもよいと思います。

例えば、家族旅行中に、子供がスマホを家に置いてきた(こっそり親がおいていく)なども良いでしょう。
大事なのは「取り上げないこと」で、親が要因でスマホが使えないというのは思春期の子供にとっては悪い思考になります。なので、あくまで演出するのがよいと思います。

「スマホを使わない時間でも楽しいことができる」「スマホを使わないことで自分にとって良いことがある」といった認識を育てることが、依存症を減らす助けになります

ぜひ、そういう機会を「演出」してみてください。


代替行動の導入 — 自己制御を高めるための新しい習慣作り

スマホ依存症に対処するためには、代替行動を導入するのも一つの手です。

心理学的には、代替行動が自制心を高め、依存行動を減らす手助けになるとされています(Marlatt & Donovan, 2005)。つまる、ここでの代替行動とは、スマホを使う代わりに行う新しい活動のことです。

例えば、スマホを使いたくなるタイミングに、「本を読む」「運動をする」「友達と外で遊ぶ」といった他の活動を習慣化することで、スマホの使用時間を自然に減らすことができます。

特に、子どもが興味を持ちやすい活動を見つけ、一緒に楽しむことが有効です。また、外部の目標を設定する(例えば、1週間に2回スポーツクラブに参加する)ことが、代替行動の定着を助けるといわれています。


自律的動機付けを育てる — 内発的動機に焦点を当てる

中学生高校生のスマホ依存症を克服するには、外的な制限だけではなく、内発的な動機(自分から進んで行動する意欲)を育てることが重要です。

心理学者デシとライアン(Deci & Ryan, 2000)は、内発的動機が最も持続的な行動変容をもたらすと述べています。

スマホの使用に関しても、外的な制限を設けるだけではなく、子どもが自分から「スマホを使う時間を減らすこと」が良いことだと理解し、納得することが重要です。

親の話を聞いてくれる年代であればぜひそうしましょう。

しかし、反抗期や思春期で難しい場合には外的なサポートに頼ることもお勧めです。

依存症の克服には、家庭内だけでなく、学校や友人との関係も大きな役割を果たします。子どもが自分の問題を周囲に話すことができるよう、親は支援的な環境を整えることが求められます。

また、教師やカウンセラー、心理学的なサポートを活用することも非常に効果的です。

学校にはスクールカウンセラーもいる場合もありますし、専門医を受診するのも良いです。

依存症の治療において、社会的な支援は重要な要素であり、特に同年代の友人や信頼できる大人との対話が改善を助けることがわかっています(Rosen et al., 2013)。

親としては、子どもが他者と問題を共有できるように、開かれた対話を促し、必要な支援を得るためのネットワーク作りを支援することが重要です。

【参考論文リスト】

・Beck, A. T. (2011). Cognitive Therapy: Basics and Beyond (2nd ed.). The Guilford Press.
・Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). The “What” and “Why” of Goal Pursuits: Human Needs and the Self-Determination of Behavior. Psychological Inquiry, 11(4), 227-268.
・Kuss, D. J., Griffiths, M. D., & Pontes, H. M. (2018). Social Networking Sites and Addiction: Ten Lessons Learned. International Journal of Environmental Research and Public Health, 15(3), 1-10.
・Marlatt, G. A., & Donovan, D. M. (2005). Relapse Prevention: Maintenance Strategies in the Treatment of Addictive Behaviors (2nd ed.). The Guilford Press.
・Rosen, L. D., Lim, A. F., Carrier, L. M., & Cheever, N. A. (2013). An Empirical Examination of the Educational Impact of Text Message-Induced Task Switching in the Classroom. Computers in Human Behavior, 29(3), 1211-1220.
・Steinberg, L. (2014). Age of Opportunity: Lessons from the New Science of Adolescence. Houghton Mifflin Harcourt.

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